ダリへの道も一歩から

天才と言われている絵画の巨匠は本当に天才なのか?努力によって才能を開花させることはできるのか。

石膏デッサン2枚目:パジャントは白トビと背景に難あり

娘の通う美術予備校の油絵科の一番のベテランⅯ先生。

東京藝術大学油画出身の先生だ。

ニヤニヤしながら絵を直してくる、ちょっと絡みにくいタイプ(娘的には)。

石膏デッサンの2枚目パジャントの木炭デッサンで、途中で修正が入ったらしい。

遠慮しながら娘が描いていたラインを消されたそうだ。

 

「謝らなくていいのよ。先生の指導が正しいんだから。私の形が間違っているんだから。どんどん消してくれて全然いいのに、『ごめんね。』って何度も言うのよ。直してくれて、正しい形を教えてくれて、目の前で描いてくれて、すっごく有難いと思ってるのよ。

なのに、『ごめんね。ごめんね。』ってニヤニヤしながら言うのよ。ニヤニヤしながらだよっ!『ごめんね。』って絶対思ってないと思うの!!」

 

感謝しているのか、腹を立てているのかわからないが、だいぶ興奮気味だ。

夕飯を一緒に食べながら、様子を聞いてみると、少しずつ落ち着いてきた。

 

「木炭での石膏デッサンの描き方を、初めてちゃんと教えてもらえたの。全体の形のとり方や、しわの入れ方、押さえ方を教えてくれたの。M先生ありがとうって感じ。

今までどうやって描いたらいいのか、高校では教わらなかった。

木炭と木炭紙渡されて、『好きなように描いていいよ』って言われて放っておかれた感じだった。

石膏デッサンの描き方とか、ユーチューブで探すと確かに出てくるけど、倍速になったりしていて、早すぎて今何を持っているのか、どんな風に描いているのかわからなかった。描いている人が、今木炭を持っているのかそれともガーゼを持っているのか。木炭を持っているのなら、どんな太さのを持っているのかとか、どうやって使っているのかよくわからない時があるの。絵を描く一番最初の過程が一番見たいのに、最初の頃って画面的に華がないせいか、途中飛ばされたりしてよくわからなかったの。

でも、今日M先生が目の前でがっつり描いてくれた。

どうやってるのかよく見えた。

どう描いたらいいのかやっとわかった。

今まで誰も教えてくれなかった石膏像の描き方を、初めて教えてもらえたの。」

 

どうやらとっても感謝しているらしい。

 

デッサンは、目の前にあるものが正解なのだという。

目の前にあるものを、あるように描くのが正解なのだそうだ。

高校一年生の時、初めての木炭で描いた石膏デッサンはラボルトだった。

今点数をつけるとすると思いっきりの赤点だよ。と娘はいう。

 

それに比べると、ずっとうまくなった。

でも、満足のいく出来ではない。

今回のパジャント。

 

原型はフランス、パリのルーブル美術館に収蔵されているベレニケ(Berenice)が原型だ。

頭部のみが2世紀頃制作された古代遺物で、胸部は1600年ころに付加して作られたという。

イタリアのフィレンツェにあるウフィツィ美術館にもほぼ同型の彫刻の頭部が収蔵されている。

「ベレニケ」とは、古代地中海に多くみられた女性名だ。

マケドニア朝ギリシャの貴族であったベレニケ1世は、プトレマイオス1世と結婚した後エジプト女王となった人物で、その後の血族の中にもベレニケ2~4世がいるとのこと。

この彫像が具体的にどのベレニケの姿なのかは定かでないが、プトレマイオス朝の王族の一人である可能性は高いとされている。

複雑に編み上げられ、左右に垂らされた髪は、アフリカ系リビア人を表す図像とされているため、古代エジプトとの関連性は強いと思われる。

 

この垂れ下がる髪。

美学生達には『インスタントラーメン』と言われているようだ。

くるくると垂れ下がる柔らかな質感をもつ髪の毛を、石像の髪の毛らしく固く描かなければならないのが難しいらしい。

 

そういえば高1の時初めて描いたラボルトの髪の毛は、石膏像と思えないほど柔らかな質感に描いていたっけ。

と、おもいつつ娘の描いたパジャントを見つめる。

 

「これはねぇ。背景がクソなの。下の切断面が太くなりすぎているのもダメ。

顔は似ているけど、実際はもう少し顔が長いんだよなぁ。

でも、一番よくないのは白トビ。」

と娘は言う。

描くたびに良くなっているように思えるが、気に入らない部分は多いらしい。

自己採点はどのくらいなの?と聞くと、

「うーん。65点かな。白トビと背景の割合が多すぎ。

絵を見るときにさ。印象って結構大事なんだけど、パッと見た目の印象はパジャントなのね。

でも、まじまじ見ると、顔がちがう。

おまけに、マジマジと見なくても、白が多いし、背景がきたない。」

娘が自分の作品につける点数は、たいてい65点だ。

五段階評価で考えると、四に近い三だという意味らしい。

四になりたいと思うのだけれど、難が多くてなかなかそこまで点数を上げられない。

 

自分が何が出来なかったのか、振り返ってみるのはとても良いことだと思う。

何ができなかったのかがわかれば、いつかそれを出来るようにできるからだ。

 

娘は背景が得意ではないらしい。

背景を綺麗に描きたいのだが、綺麗になかなか描けない。

背景を綺麗にするには、どうしたらいいの?と聞くとよくわからないのだという。

じゃぁ。背景がきれいな絵って、どういう絵なの?と聞いてみる。

「たとえばね。具体的なものは何も描いていないのに、それでも奥行きがあるように見えて、こちらが手前だとかわかる絵とかすごいと思うの。

石膏像と壁の材質が明らかに違っているっていうのをきちんと描き分けていて、それでいて天井とかが奥にあるのがわかる絵だったりとか、隅々まで気が使われている絵が格好いいんじゃないかなぁ。私の絵は、隅々まで気が使われていない感じがする。パジャントの表面上しか捉えていない感じなんだ。」

 

油絵科の描くデッサンは、目の前にある対象を空気感ごと描くのが正解。

その空気感を描くためには背景が大事なのだそうだ。

続けて娘は言う。

 

「じゃぁ。クイズね。目の前にある正解を、まるで写真のように写して描く学科はどこの学科でしょう?」

 

答えはまた明日。

 

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